議案74号「さいたま市役所の位置に関する条例の一部を改正する条例の制定について」の討論

民主改革さいたま市議団 小柳よしふみです。会派を代表し、議案74号「さいたま市役所の位置に関する条例の一部を改正する条例の制定について」に対し委員長報告に賛成の立場から討論いたします。

平成13年5月1日にさいたま市は誕生いたしました。浦和・大宮・与野の3市合併、政令指定都市への移行、その後の岩槻市の合併という大きな流れは、首都圏の一画をなし埼玉県に核を作るとともに、地域全体の成長発展に資するものだという先達たちの強い信念のもと進められたものであります。それは、地域事情や様々な考えがある中、幾多の苦難を一つ一つ乗り越えて成し遂げられた大事業でした。

この令和の時代になっても、さいたま市は全国有数の人口の社会増が続く都市として成長している政令市であります。ご尽力された多くの先達たちに心から敬意を表したいと思います。そして、その思いは、1つのさいたま市としての成長発展を願ったものであり、その象徴が「原点」としての旧3市の合併協定書であります。

私たちは、改めて地域間対立などない、1つのさいたま市としての成長発展を目指すことを考えるべきではないでしょうか。そして、先達たちが現在のさいたま市の成長につなげてこられたように、私たちも将来のさいたま市民の幸せやさいたま市の発展につなげて行くための決断が必要な時です。

新市誕生以来約20年に渡って市民代表、専門家、行政などによる「審議会」などにおいて議論を積み重ねてきました。また、移転元である浦和の市民が抱える不安を払しょくし、移転先のさいたま新都心を含めた全市的な視点からのまちづくりをしっかりと進めて行くことが1つのさいたま市としての未来を語る上では重要なことであります。

本庁舎の移転については、こういった点を踏まえて判断をして行くべきと考えています。

●賛成理由

まず賛成の理由を申し上げます。
 最初に、さきほど申し上げたように、新市誕生以来約20年に渡って市民代表、専門家、行政や議会において本庁舎の在り方を協議してきた民主的手続きは非常に重いものであるとの認識を持っております。

また、さいたま新都心は、大規模災害時には国のバックアップ機能を担う地域となる行政機関の集積地であり、本市の地理的な中心エリアに位置しております。

さらに、現住所地の浦和の地域住民、浦和区自治会連合会から要望書、請願がなされ、それを受けて対応を求める決議が議会としてまとまり、執行部としても対応を約束する旨を明確に答弁をしております。

加えて、世界的建築家である隈研吾氏を招いて、(仮称)浦和駅周辺のまちづくりビジョンの策定などまちづくりの具体化が始まっています。

令和3年2月に「移転の方針」が発表された時点では、地域住民にとって判断の余地がなかった状況でありました。その後、浦和のまちの将来に対する具体的な動き、執行部としての方向性を示し、まちの将来への希望をこれから創出することで市民の不安を払拭してゆく取り組みに期待ができます。

また、市民への説明会も浦和地区はもとより、10区で開催しており、全市的な理解を求める動きをしてきた点は一定の評価をいたします。

以上の点から賛成致しますが、次に述べるように残された課題があります。

本庁舎移転に関しては、現在も地域住民が浦和のまちの将来が見えないことや移転の理由などに対する不安や不満、説明不足を感じています。単に現状の本庁舎がなくなるという事実だけでなく、行政のまち浦和の1つの象徴がなくなるということであり、2000人を超える「事業所」がなくなることの地域への影響は大きいことは容易に想像されます。

コロナ禍が続いたこともあり、地域住民に対する十分な理解が得られたという状況にはなっていません。他市の事例と比較しても、本市の進め方は丁寧さや移転元の地域への配慮が欠けていたように感じます。その結果が地元住民からの要望書や浦和区自治連からの請願提出にもつながっています。

ただ、この点、地域住民、浦和区自治会連合会から要望書、請願が提出された際には、議会における理解が広がり、全会派一致での決議がまとまりました。内容は、丁寧な市民への説明やまちづくりビジョン及びそのアクションプランの策定によるまちづくりの進捗の見える化、現庁舎地の利活用の検討など浦和のまちづくりにあたり浦和区自治連や周辺団体・住民からの意見聴取と検討、庁内における部局横断的なまちづくりに関する組織の創設、などであります。これに対し、執行部は、厳粛に受け止め対応すると明確に答弁しております。

また、世界的建築家である隈研吾氏や有識者をお招きし、(仮称)浦和駅周辺まちづくりビジョンの策定が進められています。今後は、未来を担う若い世代の参画を積極的に行い、アクションプランなどによる進行管理のもとまちづくりの具体化が図られていくことになります。

私たちは、今後、これらのことが、確実に行われるようにしっかりと議論し、形にしていかなければなりません。

また、本庁舎の移転の議論において、跡地の利活用を明確にしないと賛同できないという市民の意見はまことに理解できるものであり、ある意味当然の事といえます。

しかし一方で、本庁舎跡地の利活用については、移転が決まってない中での庁内での検討はもとより、民間との協議などによる事業の具体化には限界があるというジレンマをずっと抱えていた経緯があります。この状況を打破して、さらに前へ、具体的な検討段階へ進むためにも、移転の決断となってきておりました。

今後は、現本庁舎跡地の利活用に関しては、民意や議会の意向をしっかり反映できる審議会等を早急に設置し、検討を進めることを求めます。その際、地域における経済効果や防災拠点機能の充実などについても反映させてゆくことが重要と考えます。

また、埼玉県庁の存在は大きく、県都浦和と言われる所以であり、さいたま市にとっても重要なことであります。現在、埼玉県庁の立て替えの議論が始まっているとの話もありますが、現地建て替えの実施が進められる際には、さいたま市として積極的な支援を行ってゆく必要もあると考えます。

一方、移転先であるさいたま新都心は、大規模災害時には国のバックアップ機能を担う地域となる行政機関の集積地であることや本市の地理的な中心エリアに位置するなどの特徴があります。本庁舎は広域的な各自治体との窓口となるものですから、新幹線や高速道路のアクセスの良さなどもさいたま市としての発展に資するものと考えます。

新市庁舎の耐用年数を80年とすると、今後90年先まで使用する可能性があるものとなります。ですから、新庁舎の検討にあたっては、現在の市役所の市民利用についての利用実態を把握した上で、将来的な業務におけるリモートワークの拡大などを見据えて、「市民がわざわざ足を運ばなくても良い役所を目指す」など将来を見据えた事業にしていかなければなりません。その際には、デジタル化による行財政改革の推進による市民サービスの向上を実現するととともに、速やかに公文書の記録保管機能の拡充を図ることを求めます。

あわせて、新時代にあった議会棟の在り方に関しては、議会とも十分な議論の場を設けて進めることが必要と考えます。

また、多額の事業費を使っての本庁舎の建設にあたってはいわゆるハコモノ批判の声もあります。この点、将来的にはいつか現庁舎は老朽化などにより使用ができなくなり、新庁舎が必要になる時がきます。時期はともかくいつかは必要となるものであり、建設事業費がかかることを持って反対とするものではありません。当然のことながら、財政が今後厳しくなることが予想される中にあってコストの縮減の取組みや民間の活用など財政支出を極力抑える工夫は必要不可欠なことだと考えます。

また、新庁舎地の住居表示に関しては、旧与野市が中央区という区名とを選択した流れや現在のさいたま市の状況、そして未来を見据えて、改めて議論をしても良いのではないかと考えております。その際には、市民や企業にとって直接関係するものである点も踏まえ、関係者のご意向やご意見を丁寧に伺い尊重しながら進めていくことが大事であると考えます。

その灯をより大きく具体的にしていくために、先達たちの思いや重ねられてきた議論を尊重し、今こそ未来志向で本庁舎の移転の決断をすべき時だと考えます。
私は、浦和市役所の近くに住んでいたこともあり、すぐには賛同する気持ちにはなれませんでした。本議案の成立は、合併以来の大きな課題を乗り越え、未来へ向かう新たなスタートラインへ立つことになります。本庁舎の移転を契機にさいたま市、そして現庁舎地である浦和の新しいまちづくりが進みます。それは、オールさいたまへ向けた新たな歴史の始まりです。そして、私たち一人一人がその歴史の1ページを作る当事者であり、また未来の市民への責任を背負っての大きな決断となります。
 
本議案成立後から始まるであろう基本計画やまちづくり事業においては、「将来のさいたま市民の幸せ」と「さいたま市の発展」のために厳しく議会でも議論していく覚悟です。また、これまで以上に市民と相互理解を深め、まちづくりへの市民参画を進めることが必要であると考えます。

最後になりますが、本議決により、「さいたま市」として、地域の個性が生かされたまちづくりを進め、市民がまちの未来に希望を持ち、活力あふれる「さいたま市」としてさらなる飛躍となるよう、私たちも努力致しますことを心からお誓い申し上げ、賛成討論といたします。


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