2011年12月、さいたま市のある中学校に通う2年生の女子生徒から「子どもの権利条約をもっと知ってほしい。そのために協力をしてもらえないか」と、わたくし出雲のもとに相談がありました。子どもの権利条約キャンペーンに賛同している出雲を調べて連絡をくれたようです。
子どもの権利条約は、正式名称を「児童の権利に関する条約」といい、18歳未満の者の権利について定めた国際条約です。1989年に国連で採択され、日本は94年に批准しています。
児童の権利条約の主な理念として「児童の最善の利益」「差別の禁止」を挙げ、児童の権利を以下の4つに分類しています。
・生きる権利 – すべての子どもの命が守られる権利
・育つ権利 – 教育や医療、生活への支援などを受ける権利
・守られる権利 – 暴力や搾取、有害な労働などから守られる権利
・参加する権利 – 意見を表現しそれが尊重される権利、自由に団体を作る権利
相談してくれた中学生はまさにこの当事者であり、その提案は、子どもの権利条約の4つの柱を生徒手帳に必須項目として載せたいというものでした。
私たちの会派はこれまで、さいたま市独自の子どもの権利条例の制定や子どもの権利擁護等について議会質問や政策提言に取り組んできたこともあり、権利の主体者としての中学生の活動を応援することにしました。
女子生徒らは学校の生徒会や先生方に協力を依頼し、総合学習の時間にタブレット型PCを活用して2学年全員を対象にアンケート調査を実施しました。
条約を知っていたかの問いに、「聞いたことがあり内容まで知っている」 と答えたのは回答者164人中たった5人(3%)にとどまり、「全く知らない」と回答したのは109人(66%)という結果でした。
全く知らない生徒が大多数を占め、権利の主体である多くの子どもたちにこの条約の内容を共有する必要があると考えた彼女たちは、調査結果と要望書を携えて細田眞由美教育長と面会。コロナ禍で親の不安やストレスから子どもへの虐待が増加している恐れもあることを指摘し、「子どもも親世代も条約を知っていたら、防げた部分もあるのではないか。生徒手帳に子どもの権利について載せてほしい」と訴えました。
細田教育長は、「自ら考え、責任を持って行動を起こす力をつけてほしいと常々思っていた。3人の行動は素晴らしい」と高く評価しました。生徒手帳に権利条約を掲載するという提案については、「3人が大きな一石を投じてくれた。とても大切なことだと思う」とした上で、「教育長として各学校、校長に求めれば、思考停止になる。それぞれの生徒らが議論をして、生徒手帳の掲載内容を決めるべきと考える」と話し、各学校に伝えることを約束。年度末の校長会において、教育長から直接、生徒たちの要望の経緯などが伝えられました。
今回、子どもの権利の主体者である中学生がアクションを起こしたことによって、当事者である子どもが、学校や先生、教育委員会と一緒に「子どもの権利」について考え行動するスタートラインに立ったと言えるのではないでしょうか。
一方で、児童虐待や貧困、新型コロナウイルスの影響から子どもたちを取り巻く環境は依然として厳しく、市としても大きな課題です。
私たちの会派も子どもの権利条例や子どもの権利擁護等の制度化実現にひきつづき粘り強く取り組み、子どもたち自身の成長を支える活動を行ってまいります。
(出雲圭子)